ジェミーの散らかった部屋

りんごを丸かじりします

Entries from 2023-01-01 to 1 year

えげつない祖父

私は祖父を知らない。彼は50代で早逝した。どの孫の顔も見なかった。 私は祖父がいわゆる昭和の怖い親父であるような話を聞いていた。しかしあるきっかけからとても興味深い人物に思えた。彼の若い頃を知るべく祖父の知己である松沢さんという方の居所を祖母…

狂気について

生きていると、沈んでいく。朝起きて、歯を磨いて、ご飯食べて、毎日の義務をこなし、風呂に入り、寝る。同じところに住んで、退屈が身体の内側から腐っていく。ありきたりの趣味で時間をつぶすと、指から砂のように溶けていく。同じことばかりしていると、…

Arezou

イランのテヘランでバスを待っていると、若い男性が話しかけてきた。どこから来たの、自分はイランどこどこの出身で、など他愛もない話をしていたら、英語が話せる色んな人が集まってきた。その中のひとりにArezouという女の子がいた。彼女はゴルガーンとい…

温泉街

ほくほくの湯気 漆喰の白壁 渋い木の屋根 オレンヂのガス燈 大正モダン 赤、青、白、雪駄 ビー玉きらきら 昔はすべてが美しかったのか 残されたものだけが美しいのか 考える 東京に戻って 箱のような家を見ながら 考える 美しいものだけ見て生きていたかった

こんにちは、暗闇

こんにちは、古い友達 彼は自由な人だった 皆に笑顔を返しながら だれにも届かない場所へ行っていた いつからだろう 自分が自分であることに価値がなくなった あなたがあなたであることに価値がなくなった いつからだろう それはわかりきっていた それがくる…

ノスタルジアの主題と水の表現

第1章: 導入 ノスタルジアとは普遍的な、全人類的な感情である。しかし、タルコフスキーが述べるところによると、ロシア人にとってのノスタルジアはより深く、根深いものである。 「ロシア人は、新しい生き方に簡単に適応することはめったにありません。同化…

あの夏と本

日に照らされて明るく光るひまわりに太陽を見た。真っ青な空に入道雲が立ちのぼっている。世界があんまりまぶしくて目がくらくらした。蝉の声は日夕しみわたっていて、いつも傍にいるかのような親しみを覚える。日本の夏は豊かである。 学部二回生の夏休みは…

東京フォビア

東京にはすべてがあって、なにもない。 私は東京生まれで、一応江戸っ子でもある。 小さなころは東京に、江戸を感じていた。 夏の運河の少し焼けた潮の匂い。築地市場で喧しく行われる競り。 神保町の古本街、数学の本を買ってもらった八重洲ブックセンター…

フィッシャー『資本主義リアリズム』を読んだ

自由を愛しています。世界が嫌いです。 ここから逃れるために長い旅に出ました。 古代の文明に胸を高鳴らせて、中国に行きました。 昔の偉大な国々を思い巡らせ、トルコにたどりつきました。 イスラム文化に憧れて、イランに旅立ちました。 サガンのような内…